22歳違いの父だったが、ざっくばらんに会話したことはなかった。
と云うより、一緒に生活した日々が少なかったから、打ち解けて喋りあう機会
を逃してしまった。
父は、師範学校時代に剣道をたしなんでおり、わが家の裏庭で竹刀を振り居合
道のまねごとをしていた。暗闇に響く気合の声と振る舞いが不気味で怖かった
記憶がある。その怖さを増幅したのが、桐たんすの奥に仕舞われている真剣一
振りの存在だった。
ときには、ススの布切れにまかれた真剣を取り出し手にかざし、砥石の細かい
粉の入ったお手玉の様な「打ち粉」でポンポンと軽く上下に叩き、和紙で粉と
古い油をぬぐい、最終にさび止めの椿油をサッと塗る。
その行為がかもし出す正座した得意げな姿なのだが、幼少のころは真っ当に見
られなかった。
父から引き継いだ日本刀。今やはり、わが家の新しい箪笥の奥に眠っている。

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