 |
| 季刊「小説 トリッパー」 |
澁谷に出る機会があって、暑さ凌ぎに駅前の「あおい書店」に寄った。
先に「文藝春秋」(8月号)で、井上光晴の娘・井上荒野と瀬戸内寂聴の対談を
読んでいて、そこで取り上げられたテーマのことでもう一つの雑誌が気になって
いた。
飛び込んだのを幸いに、少し親しい店長にこれまで購読したことのない「小説?
クリッパー」って云う雑誌が在るかきいてみた。さすがで、即座に僕の頓珍漢加
減を修正するでもなく、「小説トリッパー」(朝日新聞出版刊)を文芸雑誌棚か
ら引き出してくれた。高値の雑誌だと思いながら、買ってしまった。
小説は単純に小説として読めばいいのに、その小説家が知人や友人であるとどう
しても「私小説」風な下世話な方へ関心がいってしまう。
そんことからして、私小説は一切読まないと云う人もいる。
まず先に接した「文藝春秋」の二人対談では、既に井上荒野さんが昨年冬号から
連載している「あちらにいる鬼」を前提に(話題になっているらしい)、瀬戸内
寂聴(晴美)に、父親光晴さんとの関係を母親と絡めてざっくばらんに聞き出し
ている。
瀬戸内さんが井上光晴さんとの関係でもっているエピソードと荒野さんが自分の
母親や父親・井上光晴の瀬戸内さんをめぐる振る舞いを感受してきたエピソード
を、お互い余すことなく披瀝しあう熱い対談だった。
そして、連載中の小説「あちらにいる鬼」は、瀬戸内さんと荒野さんの父・光晴
氏、お母さんをモデルにし、長年にわたる交友を摩訶不思議な世界として創作す
る。瀬戸内さんと荒野さんの母親の視点をかわりばんこに書き分ける創作手法を
上手く使っている。
(←ブログ:2016・7・30 「井上光晴について」1085)
(←ブログ:2016・11・20 「『ガダルカナル戦詩集』井上光晴を読む」1564)