2020年10月17日土曜日

本との出合い            2994


僕は生涯で半世紀以上にわたり出版業に身をおいてきたが、本に対しては自分
なりの邂逅が数あった。

それは、新刊本よりも古書のほうで、棚にならぶ背表紙に対する直感が働き、
抜き取り目次を見て頁をめくっただけで、末永く対話を重ねる本か、それとも
一瞬気がとまるが後々まで残らないものかがその場で大体わかる。
そうしたことを考えながら買い込んで、自室にかえり読みはじめるとき新しい
知識と想像力の広がりを感じさせられる快楽がある。

これは、新刊本を買うときにも応用される。頁をめくらなくても強い関係性で
つながる本は存在するように思う。
これまで、若いとき数回の引っ越しの経験があるが、その都度書架をいじって
きたが、序列があってジャンル別に一等地がある。
立ってちょうど1メートル余の、目線を動かせば直ぐ触れる場所がある。

僕の特等席には、埴谷雄高の真善美社版『死靈』が永久に変わらず在る。
初めて手にしたのは、20歳の春だった思う。
買ったのは早稲田通りの「文献堂」。目線より高い棚上段に見つけた。
(→後日に続く)

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