吾妻橋を渡って、枕橋を経て隅田公園の桜を逍遥しながらの先に、佐多稲子の
旧居跡があった。
佐多さんからは、新刊を出すたびに丁寧な署名りで恵贈いただいていたので、
旧居住地に偶然であえたことを時を経て感動した。
その随想集『出会った縁』(1984刊・講談社)に、大川(隅田川)の思い出
として吾妻橋が綴られている。 「自分だけは、
隅田川へかかればいつもそこに、ぴたっと気持ちを寄せている。わが家が長崎
から東京へでてきて、住まいを定めたのがこの隅田川の土手下の向島小梅町で、
つまり、私としての東京がここから始まった。その十一歳から大震災までの十
年間を、家こそ移ったがずっとこの辺りに住んで、少女から娘時代の、感情の
ふくらむときをこの川になじんで過ごした。今私が、隅田川にすぐ気持をゆす
られるのはこの過去によっている。」
最近の僕は、今の年齢について思うようになった反映からか、これまで出会っ
た縁ある人や、事柄についての縁がしきりに気になりだしていることがLogの
なかで気づかされている。
今回は「隅田川の桜を散策の会」で吾妻橋との出合いがあり、そこから、再度
佐多稲子さんの本を書棚から抜き出し読み、佐多文学の精美を味わうことがで
きた。

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