2021年9月2日木曜日

越中おわら風の盆 記憶の深層㊿   3314

林秋路版画
いつも今どき二百十日になると心が騒ぐひとがいた。
越中富山の八尾町で開かれる「おわら風の盆」、僕も前後して二度訪ねている。

民謡と踊りの伝統芸能はそれぞれの地方に数々あれど、八尾の踊りのたたずま
いはどんなものなのか。
八尾はかつて富山藩を支えるほどの財力を蓄え、商都として栄えた町と云う。
町に入る橋の欄干には、踊り姿のレリーフがあった。おわらを歌った野口雨情
や作詞作曲の小杉放菴の碑も目にとまる。

いまや本番当日の町の道筋は、多くの観光客でぎっしりと埋まっている。にも
かかわらずとても静謐なのだ。踊り手の草履が石畳をこする音まで聞こえてく
る。奥の深い透き通った唄声、哀愁を秘めた胡弓の清流のような音色、顔を笠
で隠した優美な踊り、、、夜の静寂のなかで一つの宇宙に融合する感触。
団体の踊りではない。少人数での淡く温かいぼんぼりの照らされる石畳を流す
幻影は深夜までつづく。

共に着ましょと 一筆そえて 送るおわらの オワラ 染浴衣

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