2016年11月28日月曜日

この一冊と一本の映画、、       1571

書影(2016・5刊/544頁・2500円)
暮れの忘年会や納会の時期になってきた。
或る会の幹事から、出・欠席の返事に添えて「今年読んだ本と、観た映画で面白
かった作品を教えてくれませんか。」とあった。

本では、管賀江留郎著*『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(洋泉社・刊)

表紙表題を見て咄嗟に経済学者アダム・スミスの『道徳情操論』(岩波文庫では
『道徳感情論』)を援用した犯罪ノンフィクション作品かと思った、、。
戦中戦後に起きた、少年による大量殺人事件「浜松事件」と「二俣事件」という
連続性のある二つの事件を題材に、冤罪をつくり上げていく背景を圧倒的資料
で、「人の心の変遷」として浮上させてくれる。
一般的にいわれてきた冤罪の背景には、初動捜査のずさんさや司法、法医学
やメディアの動向が問題にされるが、この著者の視点には政治・哲学や心理学、
進化論、プロファイリング、サイコパス、、総合知を不断に援用して、人間の道徳
感情や共感にその解明をもとめるところに衝撃をうける。
500頁を裕に超える文字ぎっしりの大冊だが、最高の推理小説に当たった感動
で一気に読了した。
(←ブログ:2016・7・14 「『道徳感情はなぜ人を誤らされるのか』を読む」1436)

映画は、*「サウルの息子」(監督はハンガリーのネメシュ・ラースロー)

カメラアングルが斬新で、何気なく聞こえる言葉や音響が不気味に迫ってくる。
1944年10月、アウシュビッツ強制収容所の二日間の記録。
ハンガリー人で時計職人であったサウルが、黙々と死体処理の清掃作業をして
いる背後(上着の背には朱色の×印)からの姿が映し出される。
クローズアップされるのはサウルの目の動きだけで、背景は霧がかかったよう
に不透明で音響だけがあるので不気味さが増幅する。
サウルはゾンダーコマンドといって、同僚をガス室に送り込む任務のユダヤ人、
数ヵ月働かされたあと抹殺される。
ラストシーンの脱走した途中、子供を土に埋葬しようとする場面と、逃げ込んだ
小屋の外に一瞬現れる子供の姿は、ホロコーストの暴虐残虐の極みを伝承す
る象徴なのか。
森に響く銃声と霧のなかに、ジエンド。
(←ブログ:2016・8・2 「「サウルの息子」を観る」1455)


0 件のコメント:

コメントを投稿