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| 『時に佇つ』佐多稲子著(1976・4/河出書房新社刊) |
先日、浅草で地下鉄を出て十字路に立ち、向島・吾妻橋方面の標識を見たとき、
急に佐多稲子さんのことを思い出した。
僕は佐多稲子さんから、70年代から80年代に新刊を出すたびに署名入りの本
をいただきました。
直接会って話したことも、手紙でのやりとりもないが、唯一、考えられるのは当時
「婦人民主クラブ」なる新聞があって、それにサン六つ広告の出稿をしていたこと
が遠因なのだろう。佐多さんは埴谷雄高さんとも自著のやり取りはあったが、、。
長崎生まれの佐多稲子さんが、長崎造船所を退職した父に連れられて上京して
住んだのは墨田区(現)の向島の長屋だった。
彼女は、対岸の浅草や上野、神田の飲食店や工場へ働きに出るようになる。
その頃の体験に基づく短編小説や随想で、ゆかりのある人や事柄が語られてい
る。
遊びに行くとき、勤め先のキャラメル工場に通うとき、関東大震災のときも、必ず
渡った「吾妻橋」の描写では、喜びと悲しみが共存していて胸にジンとくるものが
ありまあす。
今、ビルの向こうに聳えるスカイツリーを見ながら、架け替えられた吾妻橋を渡
れば何を想うか、、、。






